一種の愛情

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苦痛で顔をゆがめ

ど仲のよいお友達だったのね。この山根さんと羽賀さん」
「ふつうではないって、どんな」
 父はかぶりをふった。目をとじて、うつむいたままじっとしている。
 ひたいが汗ばんでいた。酒くさい。
「ねえ教えて。どんなふうだったの。私、中国のこと、なんでも知りたい」
 父は目をひらいた。涙をためている。苦痛で顔をゆがめて話してくれた。
「拷問されてな。滅茶苦茶に刻まれてな。手の指を一本一本切り落されて」
 葉子は息をのんだ。後悔した。
 それ以上ききたくなかった。通訳は二十メートルほどさきの橋のそばで待っている。
「鼻を削がれていた。目もくりぬかれていた。きんたまも切られていた。それだけではない。最後は土の上さ寝かせて、トラックで頭を轢いたんだぞ。二人とも頭がメチャッとつぶれて、脳味噌がとびちって」
「もういい。やめて、お父さん」
「そりゃひでえもんだった。南京大虐殺がどうだったって、あれにはかなわねえ。深さとしつこさがちがうんだから。あれをみてからうちの部隊はつよくなったな。よくもやったな中国兵。かなり殺したべ。あたりまえの話だった。戦友のあんな姿をみて、わーっとこない者がいないわけねえ」
 山根、羽賀はともに一等兵だった。
 ある夜間戦闘で、山根が足を射たれて動けなくなった。羽賀が山根を背負ってあるいた。だが、本隊とはぐれてしまった。
 山地で迷っているところを敵におそわれて捕虜になった。無惨な死体は小学校の裏庭まではこんで捨てられていた。この村のなかにも拷問に加わった者がいるはずだ。父の部隊は村人をきびしく追及した。そのさい民間人にも何人か死者が出たはずだという。
「いい思い出のある村でねえのだ。ただ、この二人をなんとしても日本さつれて帰りたかった。そのためにここへきた。回収できたからなあ。きて良がったと思うよ」
 二人は立って、クリーク沿いの道をもとのほうへあるいた。
 通訳と合流した。三人はもう学校を通らずに、そのまま村の大通りへ出た。
 学校の正門まえにクルマが待っている。こちらへ呼びに通訳が走っていった。
 道に面して菓子屋があった。アイスキャンデーをつくっている。葉子はのどがかわいていた。父もそうだという。葉子は戸をあけてキャンデー屋のなかへ入った。父もつづいて入ってきた。キャンデーを四本注文する。
 老婆が二人、店内のベンチに腰をおろしていた。二人はじっと父をみつめた。
 視線を感じて父は顔をそむけた。いつになくけわしい表情になっていた。
 老婆が金切声をあげた。父を指してなにかわめき立てる。もう一人も立って、早口にののしりはじめた。
 老婆は店の戸をあける。近所の人にもきてもらおうとしてわめき立てた。父を指して、ののしりつづける。最初声をあげた老婆はヒステリー状態で足ぶみをつづけ



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