一種の愛情

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が実現できたのかも

は、「天皇崇拝」以前の、日本人の伝統的な信仰生活とはどのようなものであったのか。その好例は、民家における神仏の祭り方であろう。土間には、火のカミや水のカミが祭られており、敷居にも敷居のカミがいた。板間には、普通囲炉裏明開化の名の下に、「迷信」や「祈祷」も排除されるようになってしまった。
 要するに、身近で親しいカミガミや名もない神々が、信仰の対象からはずされることになった。日本人の信仰を支えていた特殊な部分、つまり、日本人の信仰の毛根の部分が排除されることになったのである。毛根を切られた木々がどうして順調に育つであろうか。日本人の精神生活は重大な危機を迎えたのだが、そのことに気づいた人は、きわめて少数であった。
 「神社合祀令」によって、結果的に、全国の神社は、国家が直接経営する神社と、府県が経営する神社、それに村が維持する神社などに分類されるようになった。だが、明治の法令でいう神社だけでも、その数はおよそ一一万に達していたのだが、国家や府県、村が経営する神社の総数は、わずかに二千を下回るものであった。つまり、一〇万を優に超える神社が、明治の「天皇崇拝」のシステムから除外されてしまった。毛根を切られた木々のたとえでいえば、国家による施肥の恩恵に浴したのは、二千本にすぎないということになる。
 こうして日本人は、長きにわたって維持してきた、特殊と普遍という組み合わせからなる信仰のシステムを放棄せざるをえなくなり、表面的に雑多と見えた信仰が、文字通りの「雑多」、「曖昧」になってしまったのである。
 それだけではない。神々に対する信仰は、「祭祀」と「祈願」にも分離されてしまった。さきに紹介したように、井上毅は、神道とは宗教ではなく、国家の「祭祀」だと主張した。だが、神々への信仰は、それほど簡単に「祭祀」と「祈願」に分離できるものであろうか。
 考えてもみてほしい。神社に参拝したとしよう。だれが、祈願もせずに、柏手を打つという儀礼だけをすることがあろうか。祈願があってはじめて、柏手という儀礼がともなうのだ。それを、神道とは柏手を打つという儀礼だけにとどめようというのだ。たしかに、祈願のない儀礼は、信仰に似て信仰にあらざる営みであり、その意味では、見事に「非宗教」が実現できたのかもしれない。しかし、神社信仰において、それは自殺行為であった。
 その自殺行為を、明治の為政者たちは、「天皇崇拝」の名の下に実行したのである。また、神社関係者の大部分も、こうした政策を積極的に受け入れた。こうして、神道式の壮麗な国家行事が、神道という宗教から切り離されて国民生活に君臨することになった。
 問題は、この似非宗教が、本当の宗教よりも力をふるったということであろう。国家は、この神道式の国家儀礼を、どのような信仰の持ち主に対しても、「非宗教」なるが故に、強制することができたのである。
 神々の、「天皇崇拝」システムへの繰り込みの過程において生じた、他の重要な問題は、日本人の間で成立していた、一種の信教の自由論を抹殺してしまったことであろう。つまり、「敬神」と「祈願」の区別を曖昧にしてしまったことである。
 「敬神」と「祈願」の区別に精力を費やしたのは、柳田国男であった。彼によれば、「敬神」とは、自分と関わりのない他の土地の神々に対する敬意を表現する言葉であり、人々が村を離れて旅行するようになり、見知らぬ神社に敬意を示す必要が生じるようになってから生まれたという。
 「祈願」とは、そうした見知らぬ神々への敬意ではなく、各自が生まれながらに属している氏神に対する信仰のことである。したがって、「敬神」の対象になる神々に、「祈願」をこめるということはないということになる。
 こうした区別は、互いに他人の信仰を認めあい、家々の異なる神々を敬い合うことを意味した。それは、立派な信教の自由の表明ともいえるであろう。日本人は、ヨーロッパに学ばなくとも、それくらいのことは、すでに自前で手にしていたのである。
 いずれにせよ、神道を含めて日本の「自然宗教」は、明治政府の「天皇崇拝」のイデオロギーのもとで、そのシステムや約束事を大きく変更せざるをえない状況



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