一種の愛情

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れに身体をあずけ


 マンションに帰り、玄関を開けると奥の居間の明かりがついていた。
 尚美が起きて本を読んでいた。「おかえり」と静かに口を開いた。
「なんだ、起きてたんだ」そのままキッチンまで歩き、冷蔵庫から缶ビールを取りだした
「君も飲む」
「うん、もらおうかな」
 尚美のぶんをテーブルに置き、向かいのソファに腰をおろした。
「どこ、行ってたの」プルトップの栓を抜き、尚美が言った。
「プール」
「嘘」小さく目を剥く。
「ほんと。ただし閉まってたけどね」
「……あなた大丈夫?」
「大丈夫さ」思わず苦笑していた。
「どうしたのよ」
「うん?」少し考えた。背もたれに身体をあずけ、吐息を漏らした。「実はね……」言いかけて、噴きだす。どうしても込みあげてくるおかしさをこらえることができなかったのだ。
「なによ、教えなさいよ。そんなに楽しいことがあったの」
 つられて尚美もほほ笑んでいる。
 夫婦の間で隠し事はいけないと思い、和雄は今日の出来事をすべて話した。
 もう自分は大丈夫だとも伝えた。ついでにこの前の夫婦喧嘩についても謝った。
「その医者って注射フェチでマザコンだったんだ」尚美が肩を揺すってる。
「でも、あなたの病気を治したんだから、結果としてはいい医者なんじゃないの」
「ああ、そうだね」また噴きだしてしまった。
「わたしね」尚美がぽつりと言った。「ほんとのこと言うと、焦ってたんだから」
「なにを?」
「あなたのことよ。気がヘンになるんじゃないかって、かなり怖かった」
「ああ……ごめん」
「貯金通帳調べて、よし半年ぐらいならなんとかなる、いざとなったら会社を辞めさせようって」
「そこまで?」
「そうよ。あなたと同じで眠れなかったんだから」
「……ごめんよ」あらためて頭を下げた。
 尚美がソファにもたれこむ。口元には静かな笑みを浮かべていた。どうやら機嫌はすっかり直ったみたいだ。
「今度、わたしもプールに連れてってね」
「うん、いいよ」
「毎日はいやだけど」
「そりゃそうさ」
 久しぶりに夫婦らしい会話をした。尚美はビールをおかわりして、少し酔ったのか赤い顔でじゃれてきた。
 そうか、そういえば水泳以外にも体力の使い道はあったのだな。あれだって立派な有酸素運動じゃないか——。和雄はそんなスケベなことを思いながら、顔をニヤつかせ、尚美に覆いかぶさっていく。
 開けてあった窓から気持ちのいい夜風が吹きこみ、外では犬が遠吠えしていた。



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