一種の愛情

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號の全ミサイルを使用

  「大佐どのは、何かなさるおつもりなのですか?」

  かれは副司令官の話を、ただの話だけだとばかり思っていたのだ。

  タワーズは微笑した。

  「われわれは政治家じゃあない。むだ話はしない。行動するのだ」

  ジョニイは思わず、口笛を吹いた。

  「いつ始めるのでしょう?」

  タワーズ大佐はスイッチの一つを入れた。ジョニイは、いきなり自分の聲が聞こえてきたのに驚いた。ついで、その會議の録音が、下級將校用食堂でのことだと気づいた。その政治論議には覚えがあった。あのとき、かれは途中で出ていったのだが……それでよかったんだ! だが、スパイされていたとは面白くない。

  タワーズ大佐はスイッチを切って、いった。

  「行動はすでに起こしているさ。だれが安全で、だれが危険かはわかっている。たとえばケリーだ……」スピーカーのほうに手をふって、「ケリーは政治的に信頼できない。きみは、朝食のときかれがいなかったことに気がついたろう?」

  「え? かれは當直だと思っていましたが」

  「ケリーの當直時代は終わったよ。ああ、心配するな。怪我はしていないからな」

  ジョニイはその言葉の意味を考え、そして尋ねた。

  「わたしはどちらのリストに入っているのでしょう? 安全なほうですか? 危険なほうですか?」

  「きみの名前には、疑問符がついているんだ。しかし、わしは以前から、きみは頼りになる男だと主張してきた……わしに恥はかかさんだろうな、ジョニイ?」

  大佐は愛想のいい笑顔を見せた。

  ダールクィストは返事をしなかった。タワーズ大佐は鋭くいった。

  「さあ……きみはどう思うのだ? 答えろ」

  「はい……では申し上げますが、いささか手にあまる仕事ではないでしょうか。月基地が地球を支配しているのは事実ですが、月基地そのものは、船からの攻撃にたいしては、実に容易な標的です。ミサイル一発で……終わりです!」

  タワーズ大佐は一通の電文を取り上げて、かれに渡した。それには、こう書かれていた。

  洗濯できた──ザック

  「これは、トリグブ・リエ號の全ミサイルを使用不能にしたという意味だ。同様の報告を、心配する必要がある船のすべてから受けている」かれは立ち上がった。「よく考えて、晝食後に來たまえ。モーガン少佐がきみの助けをすぐ必要としている。ミサイルの制禦周波數を変更するためだ」

  「制禦周波數を?」

  「當然だろう。ミサイルが目標に達する前に邪魔されたくはないからな」

  「何ですって? 戦爭を防止するためだといわれたはずですが」

  タワーズはあっさりと、その質問をかたづけた。

  「戦爭はおこらん……心理的デモンストレーションにすぎない。重要でない町を一つか二つやるだけだ。全面核戦爭を防ぐためのちょっとした放血手術だ。簡単な算術だ」

  かれはジョニイの肩に手をおいた。

  「びくついてはいないだろうな。そうなら、初めからミサイル係將校にはならんはずだ。これは外科手術だと考えるんだ。それときみの家族のことを」

  ジョニイ・ダールクィストは、さっきから家族のことを考えていたのだった。

  「お願いです、大佐どの、司令官にお目にかからせてください」

  タワーズは眉をよせた。

  「代將には會えない。わかっていると思うが、わしは代將に代わって話している。もう一度會おう……晝食のあとで」

  代將に會えるはずはまったくなかった。代將は死んでいたのだ。だがジョニイは、そのことを知るよしもなかった。

  ダールクィストは食堂にもどり、煙草を買うと、腰をおろして一服した。かれは立ち上がると煙草をもみ消し、基地の西エアロックにむかった。そこで宇宙服を著こむと、エアロック係のところへ行った。

  「スミティー、あけてくれ」

  宇宙海兵は驚いた顔になった。

  「タワーズ大佐の命令がなければ、どなたも月面にお出しできません。聞いておられないのですか?」

  「知っているさ! 命令簿を見せろ」

  ダールクィストはそれを受け取ると、自分にあてた許可証を書き、タワーズ大佐の命令により≠ニして、その下に署名した。




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